第6話 最強魔王、連合軍を殲滅する
カーランド王国を完全に掌握し、各地の抗戦も鳴りを潜めた頃。
俺はアルメナからの報告を聞いていた。
「バルディン様。ハイデン王国、レイズ公国、バルザック帝国の三国連合軍がカーランドの王都を目指して進軍しております。如何なさいますか?」
「数は?」
「およそ十万です。騎兵は一万、弓兵は三万、残りは歩兵です。魔法使いの姿はいずれも確認できませんでした」
十万か。かなりの数だな。
「よし、俺が行こう」
「バルディン様自らですか?」
「そうだ。供は要らん。一人で暴れたい」
「……バルディン様らしいですね。承知しました」
俺はそのまま城を出て、散歩がてら連合軍のいる場所へ向かった。
やってきたのは草原地帯だった。
足場は悪くなく、十万の連合軍がぞろぞろと並びながらカーランド王国の王都を目指して進軍している。
ここにデカイ魔法を一発ぶち込めば綺麗な花火が見られるだろう。
俺は連合軍の進行方向を遮るように立ち――
「スカーレットノヴァ」
俺が一番好きな魔法、広域殲滅魔法だ。
上空に巨大な魔法陣が出現し、空を覆い尽くすほどの炎の雨が降る。
ただの炎ではない。
一つ一つが着弾と同時に周辺数百メートルを吹き飛ばす爆弾のような炎だ。
その全てが連合軍に降り注ぐ。
「――ほう」
俺は思わず感嘆の息を漏らした。
俺の得意な魔法と言っても過言ではない広域殲滅魔法を誰かが防いだ。
連合軍の全てとまではいかないが、そのおよそ三割を防御魔法と思わしき障壁を展開して守り切ったのだ。
一撃で全滅させるつもりだったが、まさか防がれてしまうとは。
「仕方ない。もう一発――と、流石にもう撃つ隙は与えないか」
連合軍の一部の騎兵がこちらに向かってくる姿が見える。
俺の存在に気付いたのだろう。
たった一発で全滅と言ってもいい被害を与えたにも関わらず向かってくる胆力……。
魔王の立場からすると高評価である。
ここから魔法で蒸発させてやってもいいが、わざわざ向かってきているのだから近接戦闘で決着を付けてやろう。
――この舐めプが間違いだったと、俺は後で思い知る。
「貴方が今の魔術を放ったのかしら!!」
「あれは魔術ではなく魔法――ぉお!?」
俺は向かってきた連合軍の部隊、その面々を見て絶句してしまった。
ああ、別にその部隊が屈強な戦士たちだったからではない。
では何に驚いたのか。
それは向かってきた部隊が全員、やたらと露出度の高い鎧を着ていたのだ。
もう鎧として機能していないと思う。
しかも一人一人が思わず目を奪われるほどの美少女美女である。
加えて言うなら、揃いも揃って見事な巨乳だったのだ。
そして、その一団を率いている美女に至ってはアルメナに匹敵するメロンっぱいである。
「ではお覚悟を!! 各員、結界魔術を使いなさい!!」
「「「「「はっ!!」」」」」
「む」
俺が無数のおっぱいに見惚れていると、一団は動き始めていた。
俺を中心に半球型の光の幕が展開される。
それと同時に指先が痺れるような、身体の動きにコンマ単位のズレが生じた。
これは……。
「今さら気付いたようですわね!! この結界魔術は対象の身体能力を減衰させ、逆に私やその配下を強化する血統魔術!! 私たちの勝ちですわ!!」
「血統魔術……」
また聞き慣れない単語が出てきたな。
「でもまあ、支障はないな」
「え?」
少々身体の動きが鈍る程度でどうにかできるほど魔王は甘くない。
俺は周囲一帯に殺気を撒き散らした。
人間は理性的な生き物だから、そういう殺気には鈍い。
しかし、彼女たちが跨がっている馬は本能に忠実な動物なのだ。
俺の殺気に怯えて、暴れ始める馬。
その馬に跨がっていた美少女美女らは次々と落馬してしまう。
「きゃ!?」
「い、一体何が!?」
「み、皆さん、隊列を乱してはなりませんわ!!」
メロンちゃんが慌てて指示を出すが、遅い。
結界魔術は厄介そうなので真っ先に潰したいが、それ以上に迷わず次の指示を出せるメロンちゃんを始末した方がいいだろう。
俺はメロンちゃんに肉薄した。
人間の身体は脆い。俺なら素手でも胴体を貫通できてしまう。
そう思って俺はメロンちゃんに手を伸ばし――
「ほぇ?」
どういうわけか、俺はメロンちゃんのおっぱいを揉みしだいていた。
むにゅ。もにゅ。もみもみ。
柔らかい。弾力はイマイチだが、指が沈み込むような柔らかさがある。
(このおっぱい、百点です!! ごっつぁん!!)
……いや、違う。俺は何を考えているんだ。
俺は慌ててメロンちゃんから距離を取り、自分の手を見つめた。
「まさか……」
前世の人格が出てきたのだろう。
混ざり合いはしたが、消えてなくなったわけではなかったのだ。
いや、冷静に思い返せばその前兆はあった。
やたらとアルメナやマリアリッテのおっぱいを揉みたくなったし、実際に揉んだ。
クリューネに至っては俺の意志に関係なく揉みに行ったほど。
それがたった今、本気の殺意を持って振るったはずの手で無意識におっぱいを揉み、明確な違和感として認識することができた。
いつからだろうか。俺は一体いつからおかしくなっていた?
答えは分かっている。
前世の記憶を思い出した時から、俺は純粋なバルディンではなくなっていたのだ。
今の俺ではおっぱいの凄い女の子を殺すことができない。
殺そうとして伸ばした手は無意識におっぱいへと向かってしまう。
今の俺は――女を殺せない。
「あ、あああ貴方!! よ、よくも私の胸を揉みましたわね!? 皆様、やってくださいまし!!」
「「「「はっ!!!」」」」
いや、大丈夫だ。まだ慌てるような時間じゃない。
こちらから攻撃はできなくても、向こうの攻撃を避ければいい。
向こうの攻撃が当たらないなら、こちらが負けることもないのだから。
と、そこまで考えて俺は見てしまった。
向かってくる女たちの、上下に激しく揺れるおっぱいを。
俺は下半身の魔剣が反応して動けなくなった。
「よくもお姉様の御乳を!!」
「食らいなさい!!」
「この変態!!」
俺は罵声を浴びせられながらタコ殴りにされてしまった。
そういう趣味に目覚めそうになるが、流石に痛すぎて正気に戻る。
それを何度か繰り返した頃。
「な、何だったのでしょう、この男は。角も生えてますし、カーランドの『大穴』から出てきた魔族だとは思いますが……」
「この者が先ほどの大魔術を?」
「いえ、この男ではないでしょう。あれ程の大魔術を撃った直後で疲労し、この者に後を任せて撤退したのかも知れませんわ。すぐに追撃します!!」
「「「「はっ!!!」」」」
俺は死んでしまった。
いやまあ、不老不死なので死ぬことはないため、ただの死んだふりなのだが。
なんということだ。
敗北など久しく味わっていなかった、この魔王バルディンが。
この魔王バルディンが!! おっぱいに敗北することがあろうとは!!
俺は悔しさのあまり涙を流しながら、いもしない広域殲滅魔法の使い手を追って去っていくメロンちゃんたちを見送った。
その後、俺が八つ当たりで残った連合軍を消し炭にしたことでメロンちゃんたちは撤退。
勝利は勝利はだが、敗北もした。
絶対的な強さを求められる魔王にとって、その敗北は大きなものだった。
供を連れて来なかったのは正解だった。
こんなところを見られていたら間違いなく魔王軍が割れるだろう。
このままではまずい。
どうにかしておっぱいを克服する方法を考えねば!!
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「おっぱいを克服というパワーワード」
バル「それはそう」
「メロンちゃんは草」「御乳で笑った」「パワーワードがすぎる」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます