第4話 最強魔王、適当に誤魔化す
「ほ、本当に、兄さんを助けてくれるんですか?」
「ああ、おっぱいを揉ませてくれたらその男を治療してやろう。生かして返してやる」
「……あ、あぅ……」
「お前のおっぱいで兄の命が救えるのだ。さあ、どうする?」
俺は真面目な顔で何を言っているのだろうか。
でも目の前に大きなおっぱいがあったらどんな手を使ってでも揉みたいよね。
そう、これは仕方のないことなんだ(迫真)。
「……分かり、ました。でも、先に兄さんを治療してください!!」
「いいだろう。――グレーターヒール」
俺はすぐに回復魔法を青年に施し、怪我を治療してやった。
「さ、最高位の神聖術!?」
「しんせいじゅつ? それは知らんが、ただの回復魔法だぞ?」
「魔、法……?」
もしかしたら人間たちの使う魔法と俺たち魔物が使う魔法には違いがあるのかもしれない。
今後のためにもそこら辺を調べないとな。
約束通りに青年の怪我は綺麗さっぱり治療してやったし、妹ちゃんのおっぱいを堪能させてもらおうじゃないか。
俺は鼻息を荒くして言う。
「さあ、約束は守ってもらうぞ」
「っ、は、はい。どう、ぞ……」
妹ちゃんは目に涙を浮かべながら、恐怖を押し殺すように服をたくし上げた。
おっぱい!! おっぱいだ!!
俺が無言で妹ちゃんのおっぱいを堪能していた、その時だった。
「バルディン様」
「ひょあ!? な、なんだ、ア、アルメナか」
「……ひょあ?」
「あ、い、いや、何でもない。それよりも急に背後に現れるのはやめろ。うっかり攻撃してしまったらどうする」
「申し訳ありません」
「……で、どうしたのだ?」
「決着がついたようなので様子を見に来たのですが、バルディン様の方こそ何を?」
「あ、あー、えーと、これはだな……」
どう言い訳しようか。
馬鹿正直に交換条件でおっぱいを揉ませてもらっていたと言うわけにはいかないよな。
「これは――そう!! 人間の身体の構造について研究していたのだ!! 人間をより効率的に殺傷する方法を知っておいて損はないだろう?」
「……なるほど、流石はバルディン様でございます」
「は、ははは、そう褒めるな」
よし!! 誤魔化せたな、多分!!
「では用済みになれば、この人間の小娘は処刑なさるのですか?」
「ひっ、に、兄さん……」
アルメナの放った処刑という言葉に身体を震わせる妹ちゃん。
あ、冷静に考えてみたら兄の方は生かして帰すと約束したけど、妹ちゃんの方は特にどうこうするとは言ってないもんな……。
よし、ここは少し安心させてやろう。
俺は妹ちゃんの肩に手を置き、安心させるようにこっそり耳打ちした。
「心配しなくていい。お前は殺さないし、酷いこともしない」
「え……?」
俺はアルメナの方に向き直った。
「アルメナ、この少女は殺すな。貴重な地上の情報源だからな」
「情報源、でございますか?」
「あ、ああ。どうやら俺たちが使う魔法と人間たちが使う魔法には違いがあるらしい。それを俺が直々に調べようと思ってな」
咄嗟に適当な言い訳を話す。
アルメナに怪しまれないか心配だが、果たしてどうなるか。
「……左様でございますか。ではその小娘を繋いでおくための部屋を用意しましょう。ちょうどこの城には地下牢がありますし」
俺は心の中でガッツポーズした。
これで妹ちゃんの安全は確保できたし、何なら定期的におっぱいを揉める。
最高だな。
「そちらの男性はどうなさるのですか?」
「こいつは生かして帰してやれ」
「承知しました」
「ああ、頼むぞ」
こうして妹ちゃんはお城の地下牢へ幽閉することが決定したのだ。
え?
どうせ青年を逃がすなら一緒に逃がしてやればいいのでは、だって?
せっかくおっぱいの大きい子と出会ったのだ。
ここで別れてそれっきりというのはあまりにも勿体ないだろう。
というのは本音だが、建前としてアルメナに言った内容も大事なことではあるからな。
地上を征服するなら地上の情報を少しでも集めておくべきだ。
「ではバルディン様。私はそこの男を適当な人間の町に届けて参ります」
「う、うむ、任せたぞ」
「に、兄さん……」
アルメナが青年の首根っこを掴み、そのまま引きずって大広間を出て行った。
妹ちゃんが心配そうにその姿を見送る。
二人きりになって気まずいが、今からお願いしたらまたおっぱいを揉ませてくれないだろうか。
思い切ってこちらから妹ちゃんに話しかけようとしたタイミングで、逆に彼女の方から話しかけられた。
「な、何故、私の命を助けてくださるのですか?」
「ん? それはおっぱ――コホン。さっきも言ったが、地上の情報を得るためだ」
「私は辺境の修道院で育っただけの、何も知らないただの田舎者です。教えられるようなことは何もありません……」
「ただの田舎者、か」
「!?」
そのデカイおっぱいでただの田舎者は無理があると思います。
などと考えていたら――
「ま、まさか、貴方は、私の正体を知っているのですか?」
「……え? あ、ああ、知っているとも」
「有り得ません、私の存在は公的な書類にも残っていないはずなのに……」
適当に話を合わせてしまったが、この子はいきなり何の話をしているのだろうか。
ちょっと気になるのでカマをかけてみよう。
「俺の名はバルディン。魔界を統一し、いずれこの地上に魔物の楽園を築く魔王だ。そろそろお前の名前を聞かせてもらおうか」
「……私の今の名前はマリーと申します」
「ほう。して、本当の名は?」
「……私は、わたくしの本当の名前はマリアリッテ。カーランド王国では十年前に亡くなったことになっている第一王女です」
ほぇー!! 王女様だったんか!!
カーランド王国の王とその娘は始末したが、もう一人お姫様がいたとは。
……俺、父親と姉妹の仇では?
「魔王バルディン」
「な、なんだ?」
「貴方の出現は、今から何百年も前から予言されていました」
「予言?」
急にスピリチュアルな話が始まったな。
「『地上を飲み込まんとする悪しき王とその軍勢、白き勇者によって討たれん』」
「それが予言の内容か」
「カーランド王国はここ十数年の腐敗によって貴方の奇襲に成す術なく滅びました。しかし、この予言は世界中に伝わっています」
「ほう。それを俺に話してどうする?」
「これは警告です。きっと数多の勇者たちが貴方を倒すためにやってくるでしょう」
だから諦めて魔界に帰れ、と。
数百年も前の予言というのは興味深いが、それは無理な話だ。
「わざわざ警告するなんて優しいな。だが、魔界は極寒の地獄だ。地上と違って太陽がないから作物も育たず、生きるには魔物が魔物を食うしかない」
「っ」
「だから俺は魔界を統一した。地上を侵略し、魔物たちがその日を生きるのに困らず暮らせる楽園を築くために軍事力を整え、魔王軍を作った。お前が同じ立場だったら、大人しく帰るのか?」
「そ、それは……それなら、わざわざ争わずとも助けを求めればいいではありませんか!!」
妹ちゃん改め、マリアリッテはいいことを言う。
しかし、マリアリッテの言うことは正しいことではない。
俺は思わず笑ってしまった。
「普通に考えて、地の底から這い出てきた異形の怪物たちを助ける奴がいると思うか?」
「っ」
俺も話し合いで解決できるなら、それに越したことはないと思っていた。
しかし、偵察部隊として少数の魔物を地上に先行させたところ、人間たちは容赦なく魔物を攻撃してきた。
理由は分かっている。
人間と魔物では見た目があまりにも違いすぎているからだろう。
比較的人間に近い容姿をしている俺やアルメナであれば、友好的な態度を示すことで人間と仲良くできるかも知れない。
しかし、魔物の大半は人間とは駆け離れている凶悪な容姿をしているのだ。
魔界でも容姿が違いで殺し合っていたしな。
地上を詳しく調べずとも、そこは変わらないだろうと判断した。
人間だった頃の記憶を思い出した今、その考えは間違っていなかったと改めて思う。
人間は知らないものを怖がる生き物だと前世の偉い人が言っていたような気がする。
「しかし、やっぱり争いは、貴方のやり方は間違っています!!」
それでも戦争はよくないと主張するマリアリッテ。
と、その時だった。
「ねぇねぇ、そこの君」
大広間に無邪気さを感じさせる少女の明るい声が響いた。
俺はその声の主、大広間の扉から入ってきた人物の方を見る。
可愛らしい女の子だった。
サイドテールにした琥珀色の髪、アルメナと同じ黄金の瞳の美少女だ。
デザインの細部は異なるが、アルメナと同じような丈の短いスカートと黒のラバー製ビキニをまとっている。
むっちりした太ももを覆うラバー製のニーハイブーツも素晴らしかった。
しかし、おっぱいに関してはアルメナ以上。
アルメナがメロンならこの少女は夏場のスーパーで売っているスイカだろう。
側頭部からは捻れた羊のような角が生え、腰の辺りからはコウモリの翼と先っぽがハート型となっている尻尾が生えていた。
俺がアルメナよりも小柄なのに豊かなおっぱいに思わず目を奪われていると……。
「状況はよく分かんないんだけどさ。――お前、ボクのバル様が間違ってるって言ったのか? あ゛? 殺すぞ、ゴミ」
少女はマリアリッテを光のない瞳で見つめ、一切の躊躇なく殺そうと肉薄する。
俺は慌ててその少女を止めるのであった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「多分バルディンはエロメイド好き」
バ「いや、まあ、うん……」
「アルメナさんかわいい」「だったんか!! は他人事すぎる」「好きな時の反応で草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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