第3話 最強魔王、メイドっぱいを揉む




 俺はカーランド王国の城、その国王が使っていたであろうベッドで目を覚ました。


 不老不死である俺にとって眠るという行為は時間の無駄だと思っていたが、頭がスッキリして中々悪くない。


 そう思うのは人間だった頃の前世の記憶と今の魔王としての記憶が混ざり合ったからだろう。


 ああ、ベースとなっているのはあくまでも魔王としての人格だ。

 この地上に魔物たちの楽園を築くという目的は変わらないし、相手が人間だからと慈悲をくれてやるつもりは欠片もない。


 でもまあ、降伏するなら殺さないで多少の自治を認めてやってもいいかなって感じだ。



「アルメナ、そこにいるか?」


「はっ」



 俺がアルメナを呼び出すと、彼女は音もなくベッドの脇に立った。


 ……前はあまり気にならなかったが、改めて考えるとどうやって足音も立てないでいきなり側に現れているのか分からないな。


 まあ、この世界って魔法とかあるし、不思議現象が一つ二つあってもおかしくはないだろうが。



「お加減はいかがでしょうか?」


「問題ない。昨夜辺りから落ち着いた」


「それは何よりです」


「それより俺と戦っていた女騎士はどうした? 殺したのか?」


「バルディン様にダメージを与える存在は無視できません。かといって処分しては今後同じような敵が現れた際に対処できないので、研究のために地下牢に捕えております」


「……そうか。なら、あの女は解放してやれ」


「はっ。……よろしいのですか?」



 俺はアルメナの問いに頷いた。


 魔物にとっての研究とはつまり、生きたままバラバラにして隅々まで調べるということだ。


 それはやり過ぎというか、可哀想というか。


 こういう部分は前世の人格に引っ張られているようで、必要以上に苦しめてはいけないという考えに変わってしまった。


 そして、何より……。



「あの女騎士のおっぱいは、とてもよかった」


「……は?」



 そう、おっぱいだ。


 あのおっぱいのせいで、あるいはお陰で俺は前世の記憶を取り戻した。

 おっぱいという至高の存在に気付くことができたのだ。


 そのお礼というわけではないが、あのおっぱいを殺すのは勿体ない。


 とはいえ、おっぱいが大きかったからなどという理由で人間を見逃しては魔王の威厳に関わるだろう。



「というのは冗談で、奴にはメッセンジャーの役割を担ってもらおうと思ってな」


「メッセンジャー、ですか」


「ああ。人間は数が多い。いちいち滅ぼしていては兵士たちも疲労が溜まるだろう。そこで、毎年一定の奴隷を献上し、逆らわぬのであれば最低限の自治を認めてやろうと思う」



 適当にそれっぽい理由を述べてみた。


 すると、それを聞いたアルメナが目を瞬かせて驚いた様子を見せる。



「なるほど。敢えて一つの国を滅ぼすことで魔王軍の力を誇示し、同時に慈悲を与える度量があることも示す。飴と鞭ですか」


「うん。まあ、大体そんな感じ」


「ではそのように手配します。……ところでバルディン様、先程からどこを見ておられるのです?」


「いや、でっかいおっぱいだなーって」



 俺はアルメナのおっぱいを見ていた。


 でかい。しかし、ただでかいだけではない。服の上からでも形がいいと分かる。


 でかくて形もいいおっぱいとか最高だな。



「ちょっと揉ませてくれないか?」


「はあ、バルディン様であれば構いませんが」


「え、ちょ、いいんスか?」


「ええ。……それよりも、そのような威厳のない話し方はやめてくださいませ」


「お、おう、すまん。というか、ガチでいいのか?」



 無表情のままさらっと了承したアルメナに改めてもう一度確認する。


 すると、アルメナはやはり頷いた。



「別に構いませんよ。そもそも魔王軍含め、魔界出身の魔族は全て魔王たるバルディン様の所有物ですので」



 まじかよ。


 魔王って強さの象徴くらいにしか思っていなかったが、こんな最高の特典があるとは。


 俺は鼻息を荒くしてしまう。



「じゃ、じゃあ、本当に揉むぞ? いいのか?」


「どうぞ」



 俺はアルメナのおっぱいに手を伸ばした。


 手に収まらないくらい大きく、それでいてふわふわで柔らかい。

 軽く持ち上げて手を離すと「ぶるんっ♡」と何度も弾んだ。


 これが本物のおっぱい。


 前世では動画で拝むことしかできなかったおっぱいが目の前で激しく揺れているのだ。


 俺は思わず生唾を飲み込む。



「こ、これが、本物のおっぱいか。一生触っていられるな」


「……んっ♡ そ、それは、業務に支障があるので困りますね……」


「あ、いや、そうだな」



 慌てた手を離すと、アルメナは恥ずかしそうに頬を赤らめていた。


 うわ、美女が可愛い顔するのは反則だろ。



「不老不死であるバルディン様にそのような欲求があるとは意外でした」


「そ、そうか?」


「はい。まあ、私はご命令であれば、それ以上のことも致しますが……」


「そ、それ以上!?」



 そ、それはつまり、セ、セッ◯ス……。



「い、いや、それはダメだ!! そういうのは好きな男ができた時のために取っておけ!!」


「胸を揉んだバルディン様が言いますか」


「む。す、すまん、それはそうだな……。悪かった」


「……まあ、好いてもいない殿方に触られるなど死ぬほど不快なので抵抗しますが。その点、バルディン様であれば問題ありません」


「え? それってどういう……?」



 と、その時。


 何やら城の外から雄叫びが聞こえてきて、俺は部屋の窓から外を見下ろした。



「あれは……」


「カーランド王国の最後の抵抗のようです。各地で抗戦していた王国兵が決死隊となり、王都を目指して進軍しているという報告がありました」


「……そういう報告は早めに頼む」



 しかし、俺にとっては些事だとアルメナは判断したのだろう。


 見たところ攻めてきたのは数百人。


 本来は数千人の兵力があったのかも知れないが、王都に至るまでに壊滅したのだろう。


 何百万単位の数がいる魔王軍からすると無いも同然の兵力だ。

 仮に俺の前まで辿り着いたとしても、最強の魔王たる俺に勝てる存在はいない。


 俺はニヤリと笑う。



「もし城まで辿り着いた者がいたら連れて来い。俺が直々に相手してやる」


「承知しました」



 そうしてしばらく待っていると、二人の男女が大広間に辿り着いた。



「お前が、お前が魔王か!!」


「お、落ち着いて、兄さん」



 どうやら男女は兄妹らしい。


 兄の方は端整な顔立ちをしている青年で、さぞモテるだろう。


 前世の人格が「イケメン死すべし」と囁く。


 ……前世の俺はおっぱい好きなだけでなくイケメンを心の底から憎悪していたようだ。


 あまり意識したことはなかったが、今の俺は容姿が整っているので気にする必要はないと言ってやりたい。


 さて、妹の方は――



「!?」



 一見すると小柄な少女だ。


 布面積が多いシスター服を着ており、首からは十字架のネックレスを下げていた。


 どこかの宗教の敬虔な信者なのだろう。


 俺が驚いたのは、体型が分かりにくいシスター服の上からでも分かってしまうほど大きなおっぱいをお持ちだったことだ。


 年齢は十五、六歳と少し幼いが……。


 その華奢で小柄な体躯には不釣り合いなおっぱいが堪らない。


 あれはロリ巨乳。


 前世では滅多に遭遇できない、遭遇できたとしても見てはならない存在だ。



「……でっけぇ……それでいてふつくしい……」


「魔王、覚悟!!」


「うおっ」



 妹ちゃんのおっぱいに見惚れていたら危うくお兄ちゃんの剣で首を一刀両断されるところだった。


 まあ、首を斬られても死にはしないが……。


 自分より弱い相手に負けるのは魔王としてのプライドに関わる。


 俺は青年の腹をぶん殴った。



「ふん!!」


「がふっ!?」



 十数メートルぶっ飛び、そのまま青年は壁に激突してしまった。



「ははは、弱い弱い」


「兄さん!!」


「う、ぐぅ」



 妹ちゃんが青年に駆け寄り、回復魔法で怪我の治療を試みる。


 しかし、青年の傷は致命傷だった。


 妹ちゃんは泣きながら青年の治療を行うが、誰が見ても手遅れだった。


 そこで俺の中の悪魔が――前世の人格が囁く。



「おい」


「ひっ」



 声をかけると、妹ちゃんは恐怖一色で染まった表情を見せる。



「お前の兄を助けてやろう」


「……え? な、なぜ……?」


「無論、タダではない」



 俺は笑みを溢しながら鼻息を荒くして妹ちゃんに提案した。


 その提案とは――



「おっぱい揉ませてくれない?」



 俺の求める対価に妹ちゃんは目を瞬かせた。


 そして、言葉の意味を遅れて理解したのか、顔を耳まで真っ赤にした。


 あら可愛い。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「拙者、クールなスタイル抜群の美女が分かりにくいデレを見せるのに興奮する侍。押し参る」


バ「分かる」



「クーデレ最高!! クーデレ最高!!」「妹ちゃんかわいい」「あとがき分かる」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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