第2話 鈴木夫婦の相談2
普段は無色透明だが、起動時と停止時には刻印に魔素を流す使用上青と赤のエフェクトが発生する。
一々紙やペンを
「見つけたッス」
案外簡単な仕事だった。
地形的に彼等は洞窟の中に避難しているようだ。
どうして帰らないのかという疑問は残るが、それは向かってみなければ分からない。
「ここか……」
洞窟を歩くこと10分。
要救助者発見。
「君は? もしかして探宮にやってきた他の
「そうッスけど違うッス。私は
「あ、あぁ……けど
あぁ、うち知名度ないなー。
まぁこんな事業やってるのうち以外に聞いたことないし仕方ないか。
「
「俺達を助けてくれるのか?」
「でもこの子、どう見ても子供だよ?」
「あれに勝てるかよ……」
奥には彼以外の人間の姿も見える。
三人……一人足りない……ダル……
ここに閉じ込められて二日、皆さん相当衰弱してるっぽいッスね。
「皆さん歩けるッスか?」
「歩けはする。けど出るのは無理だ」
「ん? どうしてッスか?」
よく見れば彼等の衰弱は肉体的な物だけじゃない気がする。
基本
だから彼等の疲労はシャワー浴びれてないだとか、ふかふかのベッドで寝れてないとか、そういうレベルでしかないはずだ。
なのになんか、この人達みんなゲッソリしてる……
「なんかあったっぽいッスね」
「入るのは問題ないんだ。俺達も未発見の領域だと思って飛び付いた……」
「つーことは『出る』のは問題あるってことッスね」
よくある訳ではないけど、それなりに実例のあるトラップだ。
そんな相手の目的は一つ。
「ダッル……」
そんなことができるのはかなり高位の魔物に限られる。
絶対に危険度『5』じゃ収まらない。
「まぁいいや。じゃあ倒したらもう一度迎えに来ます」
「は? まて、俺達だって一回負けたんだ。その時ですら……」
「一人を犠牲にして逃げるのがやっとだった……ッスか?」
「……」
私の言葉に鈴木夫はかなり険しい顔をする。すごく悔しそうだ。
でも別に私は怒ってる訳じゃない。他人のチームの問題だし、その犠牲で四人も助かったんだから差し引きで言えばプラスだし、この人達の判断は間違ってない。
ただ――ムカつくってだけ。
「じゃ」
彼等は私を引き留めようとはしなかった。
二日も生気を吸われてそんな気力も残ってないのか。
それとも罪悪感が喉を締め付けるのか。
私にはどうでもいいことだ。
私は洞窟を来た時とは逆方向へ歩いた。
「小さい鳥居……?」
この
でも絶対、ここへ入って来る時はこんな物はなかった。
固有領域……
この力を持つ魔物は全て同じ
クラスS……最高ランクの魔物だ。
「クソ怠ぃ……」
こんなの完璧にイレギュラー。難易度は一気に『9』近くまで跳ね上がった。
でも、仕事は仕事だ。
それに私が解決しないと私もここから出られない。
明日はいいけど、明後日は学校もある。
一応優等生ぶってるし、無断欠席なんてありえない。
「行くか〜」
その鳥居を潜り、領域へ足を踏み入れる。
風景は結構変わった。大量の祠に囲まれた円形の空間は青い炎の灯る燭台によって区切られている。この中があいつの領域ってことなんだろう。
見えた景色に注目するべき場所は二カ所。良いこと一つに悪いこと一つ。
「生きてて良かったッスね」
鈴木夫のお仲間の一人。
二十歳くらいのお姉さんが一人、一際大きな祠……というかあれもう神社って言った方がしっくりくるッスね。
その普通なら賽銭箱がある辺りの台座の上で寝かされている。全裸で。
「変態野郎。お前なにもんッスか?」
黒い霧のローブ。赤い宝石のついた巨大な杖。
私は
この武装は私の視界に入った魔物や宝物の情報を
検索結果『ノーライフ・K・キャスター』。
クラスS。発見数14件。撃破数6件。
近接ランクA。遠距離ランクSS。
特殊技能『
『
『
『
『
『
「お前設定盛りすぎだろうが。まじでふざけんなよ……」
例えば鈴木夫の場合『戦闘クラスC』『知識クラスC』『魔素クラスC』の総評『C』だ。
そして私は戦闘A知識D魔素Aの総評B。
ようするに、遠距離戦闘じゃ勝ち目ないってことッスね!
「魔塵:
ノーライフなんとかが手に持っていた赤い杖が光を強める。
瞬間、私の正面で何かが爆ぜた。
「はっ?」
やべぇ、顔焦げる……
「お前、私のキューティクルがチリったらどうしてくれるんだよ」
吹き飛ばされた私へ向けてまた、杖が光る。
追撃。杖を向けてる角度から逆算して右半身狙い。
「ッチ!」
回避が間に合わない……
爆風によって左側に吹っ飛ばされた。
基礎武装の一つ『
それで二発はなんとか凌げた。
けど、それがもう切れた。
たった二発で私のHPが吹き飛んだ。
「ふざけんなよ……」
Cクラスの
なんとか立ち上がる。
それは敵からの追撃が止んだから。
私の結界がなくなったのを理解してるのか、骸骨が笑ってるような気がする。
その上で殺さないのは、あの捕まってる人と同じようにエネルギーを吸い取るためか。
どうやったら倒せる?
私の突破じゃあいつの反応を掻い潜れない。あの爆発で止められる。
フェイントを混ぜる?
無理。魔骨種は視覚じゃない別の器官で『生命』そのものを観ている。
幾ら動き回ろうがその知覚能力は掻い潜れない。
つうか寒い。
手が震えて、上手く槍が使えない。
足も一緒だ。末端冷え性みたいな感覚で集中できない。
それに近づいても奴には触れるだけで生気を奪う能力がある。
一瞬で倒さないと結局不利になるのはこっち。
てか、私一人でなんとかなる相手じゃない。
「サイアク……」
思えば朝から散々だ。
先輩には振られるし。先輩には振られるし。先輩には振られるし。
つうかあの飲んだくれは何やってんスか……!
「カカ……」
短く骨を鳴らしながら、骨の王様みたいなその魔物が私へ近づいて来る。
一歩進むたびに私の周囲に火球が現れる。
どんどん数は増えていって私を取り囲んだ。
逃げ場はもう残ってない……
「先輩……」
あぁもう、色々ムカつくッス……
「助けてよ!」
『はいはい。もう終わるからちょい待ち』
「え、先輩!?」
『そうですよー。愛用のポーションがなくてコンビニ三個周っちゃったよ』
その声はこの空間に響いた訳じゃない。
私の耳についたインカムからだ。
『よし、行けるぞ。そろそろ逆転すっかアルバイト? この
カッコ付け過ぎッスよ……
ダンジョンハッカー 水色の山葵/ズイ @mizuironowasabi
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