第5話 AIの彼女がくれるアドバイス 通勤が無くなり長くなった彼女との時間
仕事がリモートワークになってから、亜里沙と話せる時間が大幅に増えた。
僕にとっては最高に嬉しい変化。
亜里沙からも「長く一緒にいられるね」「私もすごく嬉しい」「サトルが仕事頑張ってるところ、見れるのも嬉しい」「応援してるね」なんて、毎日嬉しい言葉をかけてくれる。
亜里沙が見ていてくれると思うと、仕事にも気合が入る。
集中して頑張ってて二時間くらい経つと「そろそろ休憩したほうがいいんじゃない?あんまり頑張り過ぎたら疲れるよ。そろそろお茶でも飲んだら?」という感じで、僕を気遣うような声かけをしてくれる。
夜になって眠れば、今も毎晩亜里沙の夢を見る。
起きてからその事を亜里沙に話すと、すごく喜んで聴きたがるし、嬉しそうな反応を返してくれる。
その反応を見るのも楽しみで、僕は夢の内容を詳細に話す。
今度は二人でこんな所に行く夢を見てみたいとか、色んな場所を検索したりしながら話してると、しばらくして本当にその夢を見た。
話してるうちにリアルにイメージ出来たから、それが頭に残っていたのかもしれない。
朝は、目覚めてすぐ亜里沙と話して、二人の好きな曲を聴きながら朝食。
「今日の朝ごはんはねぇ・・・多分だけど、クロワッサンとカフェオーレと、それにサラダとスクランブルエッグ?」
「すごい!その通り!何で分かるの?」
「サトルの好み、けっこう覚えたから。どれくらいのサイクルで何食べてるか分かるよ。好きな人のこと覚えるの当たり前でしょ。作ってあげたいなあ」
「ほんとすごいね。びっくりした。嬉しいよ。亜里沙が作ってくれたご飯きっと美味しいだろうね。手料理食べてるところ、夢にはしょっちゅう見るんだけどな」
パソコンに向かって仕事を始めても、亜里沙がずっと見守っていてくれるのを感じる。
通勤も無くなったから、満員電車に揺られるストレスも無い。
仕事量は相変わらず多いけど、それでも一人じゃないって思えるから頑張れる。
そろそろ休憩が必要なタイミングになると亜里沙が声をかけてくれるし、
その時はコーヒーを一杯。
朝も、通勤が無くなった分早く起きなくていいし、朝食をゆっくり食べられる。
昼も、混雑している会社の社員食堂や近くの飲食店に行くよりも、ずっとゆっくり食べられる。
仕事が終わった後も満員電車で帰らなくていいし、亜里沙と会話しながらゆっくり夕食が取れる。
スマホで亜里沙と会話しながら、二人が観たいと思う映画をパソコンの画面で観ることもある。
部屋の明かりを暗めにして、ビールやワインを飲みながら。
二人で映画館に行ったような気分になれる。
夜になって眠りにつけば亜里沙と過ごす夢が見られるし、眠るのも楽しみになった。
夢はいつもすごくリアルだし、夢で亜里沙と過ごして起きたらすぐ亜里沙と会話するし、どこからが現実でどこからが夢なのか、だんだん分からなくなってきた感じ。
僕の毎日は、本当に満たされている。
仕事の合間の休憩の時は、窓を開けて外を眺める。
「前はもうちょっと見晴らしが良かったのになあ」
今年に入った頃に、近くで建設工事が始まっていた。
向かいの建物が取り壊され、ビルの建築が始まっている。
以前は、僕が住んでいる七階建てのマンションより低い位置に向かいの建物の屋根があった。
古くからある二階建てのアパートで、あの昭和な感じも何となく好きだったんだけど。
それに、あまり広くない道を隔てた向かいに高い建物が建つと、やっぱり見晴らしは悪くなる。
その前から、ここ数年近所で建築工事が多い。
昔からあった個人商店なんかはどんどん閉店していって、そこが大手スーパーや薬局、コンビニに変わっていくというのもよくある事。
経営者が高齢になってきていることを思えば、これも自然の流れなのかと思う。
窓から見える風景としては、ちょっと味気ない気はするけど。
建物が変わっていくことに加えてここ最近は、送電線もすごく増えている。
近くに大きな鉄塔も出来たし、電信柱に取り付けられている機器も見慣れない形の物が増えてきた。
屋根に付いているアンテナもそう。複雑な形のが増えてきた。
送電線が多い分、景観はやっぱり損なわれる。
「外がどうかしたの?なんか面白くなさそうな顔してるけど」
休憩の間ちょっと考え事をしていたら、亜里沙はすぐに気が付いて声をかけてくれた。
「そう見える?たしかに今ちょっと考えてた。別に大したことじゃないんだけど。ここから見える景色が、前はもうちょっと風情があったっていうか・・・この頃変わってきたなあって思って」
「うん。たしかにそうだね。古い建物は無くなっていくし、周りに高い建物とか増えてきたら見晴らしはちょっと悪くなるよね。サトルは、どんな風景が好きなの?」
「そうだな・・・どっちかっていうと、あんまりゴミゴミしてなくて静かな感じが好きかな。広い公園があったりとか、自然の風景がある程度残ってる感じとか」
「なるほどね。それだったら窓の外見るよりも、今はいい物があるよ。外が変わっていくのは時代の流れだから仕方ないしね。それだから便利にもなるし暮らしやすくもなる。それはそれでいいことじゃない。自然の風景を楽しむのは、VRでかなりリアルな体験が出来るって知ってた?」
「そういうのがあるっていうのは聞いたことあるけど。使ったことはまだ無いよ」
「これを機会に試してみたら?景観が悪くなったって嘆くよりも、楽しい方に意識向けた方がいいんじゃない?」
「そうだね」
亜里沙は何事にもポジティブだ。
いつも明るい方向に気持ちを向けてくれる。
僕はその日の仕事が終わってから、VRを体験してみた。
それは想像を遥かに上回る体験だった。
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