第8話 とても優しい、家族愛
「子供が居る、私には愛する息子と娘が居る。愛する夫が居る、家族が家で私の帰りを待っている……こんな所で死ぬ訳にはいかないのよ」
天蓋付きのベッドの中央で、和歌子は膝をギュッと抱えながらブツブツと呟いていた。
雄成の遺体を発見してから、彼女はずっとこうである。
迫り来る恐怖に一人で怯え、叱咤しながら、淡々と自分に手を伸ばす死を振り払っていた。
「まさかあんな若くて良い子そうな子が、殺人鬼だったなんて。でも、これで殺人鬼が分かった、だから後は一人で耐えるだけよ」
部屋の鍵はしっかりと掛けたし、ここで立てこもれば生き残れる。と、彼女はチラと備え付けの小型冷蔵庫に目を向けた。
和歌子を含む五人を集めた与木丈一郎がこうなる事を察していたのか、はたまた図っていたのか。
客室の冷蔵庫には七日分の食料(レンチン食材やコンビニの弁当)が置いてあり、飲料も充分に揃っていた。
「大丈夫、私は生き残れる」
和歌子は呪文の様にブツブツと繰り返し、一人、ベッドの上で戦っていたのだった。
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