異世界の森編
第2話 転移
それから幾程の時間が過ぎたのか、最後の瞬間を迎えたと認識してから、
また時間が流れ始めているかのような感覚が蘇ってから少しすると、
自分の意識というものが再び、くっきりとしていくような感じられて、
その変化に違和感を覚えながらも、霧が晴れていくかのように
明確になっていく自分に意識を全てを向けた。
そうして居ると、自分の体の存在を認識できるようになったため、
次に手を動かしてみようと思い、手へと力を入れてみる。
すると自分の手を動かしている感覚が伝わってきたので、
今度は足を動かそうと力を入れてみると、足が動いたと感じる事が出来た。
次に瞼を動かしてみると、目を開く事ができたのだが、
その途端に眩しいと感じるほどの光が差し込んできたので、
すぐに瞼を閉じてから、今度は僅かに目を開くという動作を繰り返すと、
眩しい光に因る目への痛みが薄れていき視界が回復していく。
そうした事に因って、目に映る物は、
自分の意識が消えていく直前まで見ていた部屋の様子とは違い、
日差しが木の葉と葉が折り重なった隙間から、
ちらちらと揺れるように差し込んでくる景色であった。
それに続いて、木の匂いと草の匂いと、それと両方の便の臭いを感じる。
その匂いと臭いがするため、周りの様子が気に成り、
首を右に左に90度くらいずつ回してみると、
顔のすぐ傍らに生えている草の葉が目に映り、
さらに草の匂いが強く鼻の中に充満してくる。
その事から、見えている周りの光景から自分が居る場所が、
意識が消えていく前に居た自分の家の部屋とは
明らかに違う場所だと分かった。
そんな今まで寝ていた部屋とは違う光景に、
「どこなんだ、ここは・・・」と、
不安になってくる心の中の気持ちを、言葉に乗せた独り言を呟きながらも
腰に力を入れ上半身を起こそうとしてみると、
一段高い視点で周りの景色が広く映るようになり、
自分が今、林か森の中に居るのではないかと推測できた。
上半身を右へ左へと腰を軸にして回しながら変わっていく景色を眺めて、
さきほど自分が出した結論が合ってる事を確認して、
息苦しさや体が外側に引っ張られるように感じたり、
逆に押し込められるように感じが無いため、
自分が居る場所は自然に呼吸ができて、気圧も変に感じない所だと分かる。
自分が素手のままで触れている地面には、
手で触れている部分に被れや痺れるなどの症状を発生させる
毒性が無いと分かる。
今は、まだ日が昇っている様子だが、
木々の葉の隙間から光の粒子が差し込んでいる部分以外は、
どこか薄暗い景色が続いている。
周りの様子を見ているうちに、他の場所の様子も見てみたいと思ったが、
上半身だけ起こしている状態のままでは移動できないので、
自分の膝を曲げて立ち上がるように動いてみる。
上手く立てるかを確認しながら、ゆっくりとした動作で何とか立ち上がり、
ずっと気になって仕方がない、お尻の辺りを中心にもぞもぞする物を、
こんな見知らぬ場所で身に着けている物を脱ぐのが怖いため、
それが地面に落ちるようにして体を振るい、
何故か穿き心地が緩く成っているパンツの中から、
パジャマの裾を伝わらせて落とす。
あのまま死んでいたのなら、そのまま楽になれたのにと思いながらも、
立ち上った事で見えてくる景色が、さっきよりも視点が高くなっただけで、
どこを見ても周りは木ばかりな様子に変わりなかったので、
ここからの移動するとして、
どこへ向かって進むのが一番良いのだろうかと思案してみたが、
木ばかりが見えているだけで変化の無い景色のため、
進む方向を決める手掛かりさえ掴めず、
それならばと適当に自分が決めた方角へ進む事に決めた。
穿いているパンツとパジャマの下が、ずり下がるのを気にしながら、
裸足のまましばらく歩いて行くと、
ずっと木ばかり見えているだけだった景色の先に、
湖のようなものが見えると共に水の匂いが漂ってきた。
その湖のようなものの果ての先には、
林か森らしき木々で覆われた場所が薄っすらと見える。
俺はその水の近くまで歩いて行き、
綺麗とは思えない水面を覗き込むようにして、
しゃがみ込むと身に着けていたパジャマ姿で
自分の顔とは違う者が朧げに映っていた。
そこに映っている自分の全身をくまなく見ていくと、
しゃがみ込んでいる姿であるが、
背の高さが以前よりも低くなってるように思えた。
また生前は不細工の上に大人しそうな顔付きのため、
女には全く好意を寄せられる事も無く、他人から付け込まれ易かったため、
この顔のせいで人生の大半を損していると感じていたが、
今は何となく生前よりも顔付が良いように見えて、その事がとても嬉しかった。
しばらくの間、ニヤニヤした気持ちで、
水面に映っている自分の顔を見つめていると、
水面を見ている自分の映ってる姿よりも、
かなり大きな物が一緒に映っている事に気づいた。
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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
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