第3話 脅威

 それは俺の後ろで、じっと動かないまま、

その場に佇んでいるだけのようにも見える。


 その得体の知れない物だからこそ感じる恐怖に耐えながら、

それが何かを自分の目で確かめようとして

体全体を後ろに捻る様にして、見慣れない物の方へと向ける動作の途中で、

その物が視界内に入りつつある中で

それが動き出したかのように見えたのと同時に

自分の背中から頭に掛けて激しい痛みを感じ、そのまま体が宙に浮いた感覚がする。


 そして自分の周りで水がしぶいてる様子が映ると同時に

背中全体が叩きつけられたような痛みを感じると共にザブンッ!

という音と共に自分の体が水の中へと飲み込まれていった。


 俺は背中と頭への余りの痛みで集中力が落ちために、

鈍った思考で自分は背中から落ちる形で、水の中へ沈んでいったのだと分かった。


 自分の身に起こった変化に対応するべく水面に向かうように

手足を動かしたのだが水泳は得意な方だったのに、

パジャマと下着を身に着けているせいか

体がさらに水底へと沈んでいくばかりだった。


 どんどんと自分の体が沈んでいく事に混乱して、

状況をさらに悪化させていくばかりで、

余りの混乱のため体が水面から遠ざかっていき、

死が頭の中を占めてしまってる俺は

唯ひたすらに手足をばたばたとさせているばかりだったが、

その甲斐が有ってなのか、幸運にも今度は体が水面へと近づいていくようになり、

顔だけを湖面の外に出せるように成った瞬間、

俺の前に見慣れない生き物が目に入ってきた。


 その生き物は恐竜図鑑などで見た事のある

二足歩行をする肉食の恐竜のような姿をしていて、

手に当たる部分は外見が似たような、絵よりも遥かに太く力強い印象を受けた。


 その姿を見て『恐竜図鑑に載っている恐竜とは違う生き物なのか?』

と疑問に思いつつも、

なぜそのような生き物が自分の目の前に居るのか

理解できないままに呆然としていたが、

現在の地球においてもまだ人類にその存在が確認できない生物が、

まだ居るからだろうという思考で、自分を無理やりに納得させる。


 しかしながら、ずっと水の中に居ては、

いずれ俺の体力が尽きてしまうだろうと思い、

何とか水面の端へと近づいて水から這い上がりたいと思うのだが、

それに因って得体の知れない生き物に近づく事になるのが怖いため、

いっそう反対側の湖畔まで泳ぎ切って湖から出ようと思ったが、

その生物が居る反対の方向の湖面に目を向けたところ、

今度はその広がる水面の中心辺りに、

いつのまにか非常に長い首を伸ばした、得体の知れない巨大な物が見える。


 その首の長く巨大にな物は、

今からこちら側に近づいて来るかのように見えたので、

少しの間、その事実にまた呆然としながら眺めてしまったが、その間も、

その姿がだんだんと大きくなって、

明らかに俺の背丈よりも、遥かに高い首長竜のような姿が見えてくる。


 その大きさ生き物がこちらへと近づいてきている事実に、

それが自分に危害を及ぼすかもしれない可能性を感じて、

水に浸かっているのにも関わらず全身から

汗を噴き出しているかのような感覚がしている。


 早くこの両側の脅威に挟まれた状態から逃れたいという

気持ちが強くなっていくが、前後に逃げ場が無いため、

どうすればいいのかと考えたが、

何としてでも自分が動き易い陸に上がるのが最優先だろうと思い、

再び後ろを振り返ると幸運にも、先ほどまでそこに居た恐竜もどきの姿が

どこにも見当たらなかった。


 どうして姿が見えなくなったのか分からないままに、

これは千載一遇の好機だと思う間も惜しんで、慌てて水面の端の陸へと寄り、

自分の体を水面から引き上げるため、両腕に手に力を入れたが、

頭と背中から大きな痛みを感じるため、

もどかしいと感じるほどの動作で水から何とか這い上がり、

水面の方を振り返ると、先ほどの首の長いものは、

その姿をさらに巨大に見えるくらいにまで近づいて来ていたので、

慌てて木がたくさん生えている場所へと逃げ込むために向かう。


 木々に囲まれた中へと走り込んだ後に、水面の方向に目をやると、

首長の生き物は水面から上がる様子が無かったので、

もしかしたら、首長竜もどきは、

水から上がる事ができない生き物だからではないかと思い、

姿を眩ました陸の方に居た恐竜もどきの存在が気にはなるが、

陸に上がれた事も有り、先ほどより安堵感が

体中に広がっていくような感覚に満たされていく。


 そして水で濡れた体のせいで少しの肌寒さを感じたが、

凍えるほどに寒さでも無かったため、水温は高かったようで、

心臓麻痺を起こしてしまうくらい冷たかったなら、

命が危なかったなと思い、水に毒性が無かった事も良かったなと思った。

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 ここまで読んで頂いてありがとうございます。


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