@mimiko

第1話

私は転校することになった。新しい学校は山の中にあり、初めての登校の日、私はなぜか「私服で行ってやろう」と突発的に思った。だけど、その考えはすぐに崩れた。もう車に乗ってしまっていて、着替える時間なんてなかったからだ。


車はぐねぐねとした山道を進んでいく。やがて学校が見えてきたが、思ったよりも立派で綺麗な建物だ。私は車を降りようとしたその瞬間、なぜか運転手は運動場の方へ突き進んでいく。車が止まると、運動場では生徒たちが体育の授業をしていた。彼らの視線が次々にこちらへ集まり、私は急に居心地の悪さを感じた。車を降りると、そそくさと校舎に向かって小走りに逃げた。


校舎に入ると、予想外のことが起こった。迎えてくれたのは先生ではなく、学生だったのだ。案内役になったのは、眼鏡をかけた大人しそうな女の子。彼女は静かに校舎を案内してくれた。校舎の中はとても綺麗で、壁には生徒たちが描いた絵がたくさん飾られていた。彼女は「ここの生徒が描いたんですよ。素敵でしょ?」と説明してくれた。確かに、どの絵も見事で、私は感心して頷くばかりだった。


そして、案内の最後に私たちは体育館へ足を踏み入れた。中ではバドミントン部が練習をしていた。どうやら今は放課後で、みんな部活に打ち込んでいるようだ。私たちは2階の観覧席へ上がった。そこで案内役の女の子がぽつりと言った。


「この学校、バドミントンがすごく強いんですよ。」


「へぇ、そうなんですか。」


私はその一言だけで、会話は止まってしまった。沈黙が広がり、ちょっと気まずい雰囲気になったその時、後ろから声がかかった。


「ねぇ、君、転校生でしょ?」


驚いて振り向くと、そこには見たこともないほど綺麗な顔立ちの男の子が立っていた。彼の髪は雪のように白く、肩に届くか届かないかの絶妙な長さ。そして、肌はまるで透き通るように白い。人形かと思うほどの美しさに、私は一瞬言葉を失った。


「そうですけど…」少し焦りながらも答えた。


その男の子はニコニコと笑いながら、すぐに自然な感じで話しかけてきた。まるで初対面ではなく、昔からの友達のように気さくで、会話は驚くほどスムーズだった。話せば話すほど、彼のことがもっと知りたいと思う自分に気づいていく。こんな風に誰かと話したいと思うことなんて、今までなかったはずなのに。


気づけば、楽しい時間があっという間に過ぎていた。しかし、楽しい時間には必ず終わりが来る。ふと目を覚ますと、私は自分がベッドの上にいることに気づいた。


――そう、あれは夢だった。


現実に戻った瞬間、胸に小さな切なさが広がった。私はあの夢の中で彼に恋をしてしまったのかもしれない。あの男の子はただの夢の中の人物で、実在しない。でも、この夢を見てから、彼のことがどうしても頭から離れない。もしかしたら、また夢の中で彼に会えるのではないか。そんなことを考えながら、私は今も日々を過ごしている。

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