第5話
「へぇ…」
初めて聞いた冷めたような声。エレベーターの開く音と共に発せられた蓮くんの返事に、幻聴かと思った。
いや、でも本当に幻聴かもしれない。蓮くんはいつだって優しいから…。
「入って」
繋いでいた手を離して、いつもの笑顔でドアを開けてくれた蓮くんに促されて、私はおじゃましますと言って中に入った。
やっぱり、さっきのは幻聴かな。
薄暗い玄関。電気のスイッチが見当たらずにいる私の後ろで、ガチャンッという大きな音と共にドアが閉まった。
「あ、まって蓮くん。まだ電気が…」
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