第8話

「こいつが欲しい」



子供の頃から欲しいものは全て手に入れて、女になんてまったく興味のなかった慧斗が欲しがった女。



約1ヶ月前の部活終わりに、慧斗と2人で教室に忘れ物を取りに行った時から彼女の運命は決まってた。



教室の隅でずっと本を読んでいたのか、その本を枕にあどけない寝顔を慧斗に見つけられたのが運の尽き。



俺が忘れ物を机から出している間にゆっくりと彼女に近づいていた慧斗。



「え、なにしてんのー?」



不思議に思った俺が振り返った時、彼女の唇を指で撫でつけながらこいつが欲しいと言った。



「…は?」


「連れて帰る」



狂気を孕んだ暗く淀んだ瞳だった。



「連れて帰るー!?え、今!?」


「あぁ」


「ダメだってー。問題ありあり!」


「欲しいものを連れて帰ってなにが悪い」



本気でわからないと言う顔で苛立たたしげに俺を睨んでくる。なにか変なスイッチが入ったように思考が狂う慧斗を見るのは初めてではないし、こうなってしまうと常識が通用しない。



でも問題ありまくりだもんなー。今まではモノだったからいいけど、今回は初パターンの人。このまま連れて帰ったら誘拐だしシャレになんない。



だから、俺は提案したんだ。



「さすがに慧斗の気持ちだけで人を手に入れるのは無理。だから、選択肢を与えて逃げ道を塞いでやればいいんだよ」



本当は彼女と少しずつ仲良くしていけばいいって言いたかったんだけど、慧斗の場合それができなそうだし。仲良くする過程でスイッチ入って襲いそう。



「あ?面倒くせぇなそんなことできるかよ」


「えーー…」



やっぱそうだよねぇー。どうしよっかなぁー。さすがに慧斗を犯罪者にはしたくないからなぁー。



そんなとき思いついたのがアレ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る