第6話

霞む視界。映るのは目を見開いて私を見る彼。瞳に孕む熱に戸惑う。



「縋り付くとか可愛いことするね?ハァ…慧斗に返さずこのまま俺が羽咲ちゃんを汚したくなっちゃうよ」


「…っ!」



彼の言葉に足がすくむ。



「龍矢。お前殺されてぇのかよ」


「えー?冗談だって!でも俺が先に羽咲ちゃんに媚薬飲ませたかったなーって後悔してる。残念だけど、返すよ」


「あ…、ぃや…っや!」



彼がパッと手を離したのが合図のように、御影くんに抱き上げられる。



「は、離し…てください…!」



どれだけ暴れても御影くんはビクともしない。私の方は一切見ずに階段を降りていく。



さっき、御影くんは私を連れて帰ると言っていた。このまま連れて行かれたら何をされるかなんて…



「覚悟しとけよ」


「…ぇ」


「俺を嫌いって言ったこと、後悔させてやる」



低い声と暗い微笑。御影くんの静かな怒りを感じて、体が震えだす。



どうしていきなりこんな事になったのか。私はなにか御影くんを怒らせるようなことを知らぬ間にしてしまったのだろうか。



考えても分からなくてまた視界がぼやける。



生まれてから今日まで、私はあまり男の人と接したことがなかった。もちろん御影くんともなかったのに。



「ゃ…」



頰に流れた涙を御影くんが舐めとる。



…もう、疲れた。



一気に体の力が抜けていく。



意識が朦朧として途絶える寸前に見た御影くんは、楽しそうに笑っていた。




「もう逃さねぇよ」

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