第4話

「あっ…!」



腰に添えられていた手が外れた瞬間に体が床に落ちる。そんな私を見て嗤う御影くんは、本当にいつも教室で見ていた彼とは程遠い。これが彼の本性なのかもしれない。



「何してんの?早く逃げないと10数えちゃうよ?」



目の前にしゃがみ込み顔を近づけてくる御影くんの目は本気。一刻も早く逃げないといけないと、頭の中で警報が鳴ってる。



御影くんはこの校舎内で30分間私が彼から逃げきれたら、何もせず家に帰してくれると言った。…けど、そんなことしていられない。どう考えても私なんかが御影くんから逃げきれるわけがないんだ。



だから、御影くんが10数えている間に学校から出る。家に帰ってしまえばとりあえずどうにかなるかもしれない。そう考えてすぐ側に落ちていたカバンを引き寄せて立ち上がった。



だけど、その瞬間ガシャンッという衝撃音が響き渡った。



「なっ、え…?」



突然のことすぎて何がなんだか分からなかったけど、気づいたときにはさっきの本と同じように、私のカバンが御影くんの後ろに落ちていた。



「羽咲さんってバカ?校舎内を30分間逃げるのにカバンを持っていく理由言ってみろよ」


「え、あ…」



御影くんは気づいてる。わたしが家に逃げて帰ろうとしていたことに。見上げた先の表情が暗く淀んで苛立っている。



苛立った御影くんは言葉と表情とは裏腹に、また体を私に絡めてくる。スカートの中に侵入した手が太ももを厭らしくなでる。



「やめ…てっ!あぁ…やっ、ん…」



体が熱い。何故か、さっき肌を撫でられたときよりも反応してしまう。



なに、これ…?ただ太ももを撫でられているだけなのに、息が荒くなる。



「へぇー、薬効いてきた?声最高じゃん。あいつに感謝しないとな」



ニタリと笑った御影くんが私を突き放す。



「きゃあっ!」



体勢を崩して床に倒れこんだ私。その衝撃でおこった目眩。火照りと服が擦れるだけで震える体。立ち上がろうとしても無理だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る