第8話

「愁くん?学校…どこに行くの?」



私の手を引っ張って前を歩く愁くんを立ち止めようとするけど、ズルズルと引きずられる。



「家」



振り向きもせずにそう言った愁くんに目を見開く。



「そ、そっか…」



今来たばかりなのに家に帰ろうとする理由は分からないけど、愁くんが言うことなら私は従うしかない。



愁くんが私に間違ったことを言ったことなんて一度もない。きっと家に帰らないと行けない理由はちゃんとあるんだと思う。



黙って歩いて行けば私の家を通り過ぎて、愁くんの家に一緒に入った。



愁くんのお父さんとお母さんは仕事で、お姉さんは学校で誰もいない。手を引かれるままに階段を登って向かうのは愁くんの部屋。



電気もつけずに部屋に入れられて、大きなベッドに2人で座った。



カーテンの閉められたこの部屋は薄暗い。



「しゅ、愁くんっ?」



私を見つめる愁くんの腕が私の腰を抱き寄せる。



「お前の不安を消してやるよ」


「…え?」


「抱かせろ」


「んっ!」



言われた言葉を理解する前にベットが軋み、うなじに手を差し込まれてキスをされた。



クチュリクチュリと水音が絶えず響く。



生暖かい愁くんの唾液が何度も喉を通過していく中で、セーラー服を脱がされていたことに私は気づかなかった。

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