第5話
愁くんは私を喜ばせる天才だ。
「ほ、ほんと…?」
「あぁ」
「毎日?ずっと?」
「そうだ。これから先、ずっとだ」
「う、嬉しいっ」
愁くんに抱きついて頰をすり寄せれば、優しく頭を撫でてくれる。
「今日は母さんの作ったシチューがあるから、俺の家で食べるぞ」
「うん!」
それから愁くんの家で一緒にシチューを食べて学校に向かった。
外を歩くときに私の手を少し強く握るのは、愁くんの昔からの癖。心配性なのか、愁くんは絶対に私をひとりで外を歩かせない。
小学生の頃から始まった2人での登下校は、私にとって大好きな時間だったりする。
でも、学校が近づくにつれて私の気分は下がっていく。
「あ、立川くんだっ」
「今日もかっこいいね」
「いつか話してみたいなー」
遠巻きから聞こえる女の子の声はどれも愁くんに向けられるもので、私の心はモヤモヤする。
不思議と話しかけてくる子はいないけど、いつか誰かに愁くんを取られてしまうんじゃないかって気が気じゃない。
こんなこと言ったら愁くんに嫌われちゃうかもしれないから、言えないけど…。
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