第11話

静寂の中に響くベッドの軋む音、素肌に触れる愁くんの大きな手。中学生の時から繰り返し行われてきた行為に、私が慣れることはない。



恥ずかしくて目を閉じている私の顔の両側に肘をついた愁くんと唇が柔く重なる。



「小春」


「ん…」



名前を呼ばれて閉じていた目を開ければ、艶めかしく濡れた愁くんの瞳と目が合った。



「お前はひとりでなにができる?」


「え?」



鼻先がくっつきそうなほどの至近距離。悩ましげに私の頰を撫でる愁くんが言った言葉の意図がわからない。



「大切な約束を破った今の小春を、俺は信用することができない」



落とされた言葉に私は目を見開いた。



「お前は無力だ。俺がいないと生きていけない」



頰に添えられていた手が滑るように首筋へ降りていく。



「そん、な…」


「お前の側にいてやれるのは俺だけだ。それなら、俺との約束を破ることがどれだけ重いことかわかるか?」


「…んっ」



貪るように重ねられた唇。僅かな隙間から愁くんの舌が捻じ込まれた。



うなじに差し込まれた大きな手。口内を犯し這いまわる舌。その舌を伝い流し込まれる生暖かい唾液。



「ぁ…んぅ…」



私はそれを絶えずゴクリと呑み込んだ。

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