第4話

夜の街を走る車は迷うことなく私の勤める会社に向かっていく。



真っ直ぐ前を見て運転する愁くんの横でソワソワして落ち着かない。もうダメなの?謝ったら許してくれる?聞きたいことはたくさんある。



「愁くん」


「なに」


「約束は1年だったは…」


「どの口が言ってんの?」



言葉を言い終わる前に愁くんの声に私の声は消されてしまった。こんなに怒ってる愁くんを見るのは、大学生の時に私が就活をしてることがバレてしまって以来だ。



「約束を破ったのは小春だろ。違うか?」


「…違わない、です」



私はきっといくつになっても愁くんには勝てない。約束だって、確かに破ったのは私だ。でも、愁くんが喜んでくれると思ってしたことなのに…。



落ち込みながら愁くんの横顔を見つめていれば視界が薄暗くなって、車が私の会社の地下駐車場に入ったのだと気づいた。静かに車を停車させてシートベルトを外して降りようとするのを慌てて止める。



「や、約束を破ったことは本当にごめんなさい!でもね私、愁くんに喜んで欲しくて…」



そこまで言って言葉を発せなくなる。愁くんの顔が見たこともないくらいに無表情だったからだ。しばらくお互いに見つめ合っていれば、私のうなじに愁くんの手が差し込まれた。



「んっ…」



薄暗い車内でゆっくりと距離が近づいて唇が重なった。軽いキスではない。愁くんの舌がピチャリと水音を響かせながらゆっくりと私の口内を犯す。



生暖かな愁くんの唾液が私の喉を通過していく。苦しくてむせそうになってもこの行為は繰り返し行われた。



これは怒った愁くんがよくする行為。うなじに添えた手で私の首を上向かせ、絡めた舌から絶え間なく唾液を流し込んでくる。



これをされると、私の体は力が抜けて麻痺したように動けなくなるんだ。

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