第48話

この部屋には少し大きすぎたテレビも、可愛らしいピンク色をした冷蔵庫も、お気に入りだったふかふかのベッドも、全て無くなっていた。



「えっ…な、なんでっ…」



ここは確かに私の部屋だ。


鍵だってちゃんと開いたのに。



慌てて開けたクローゼットの中も空っぽで、カーテンさえもない無機質な部屋にただただ立ち尽くした。



今起こっていることに頭が追いつかない。





「あら?白石さん…?」



呆然とする私の耳に届いた聞き覚えのある声。



少し驚きながら振り返れば、大家さんであるおばさんが玄関から顔を覗かせていた。



「あ、あ…あのっ…」


「もう会えないと思ってたけど、忘れ物でもしちゃった?」



優しく微笑みながら部屋の中へ入って来た大家さんに、私は戸惑った。



「それとも、マリッジブルーかしら?」


「え…」


「大丈夫よ。少ししかお話していないけど、柏木さんはとても素敵な人だったから。貴女を幸せにしてくれると思うわ」



私の両手を取ってそう言葉を落とす大家さん。



「え、あ…」



頭の中で、今すぐ逃げろと警報が鳴った。

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