第47話
久々に歩く外は肌寒く、壁を伝いながらゆっくりと進む私には酷く冷たく感じた。
ずっとベッドに横になっていたからだろうか…
熱があるわけでもないのに頭が重くてボーっとする。
時々くるせり上がるような吐き気も、私の歩幅を小さくしていく。
早く家に帰って安心したい。
その気持ちだけが私の重い足を動かした。
きっともう私はあの会社に行くことができないから、退社日まで家に引きこもって、そのまま柏木君ともさよならをしたい。
そして、新しい人生を歩んでいく。
そんな想いを巡らせて冷たい風に耐えたのに、神様はとても意地悪だった。
日の沈みかけた空ではカラスが鳴く。
季節特有の香りと空気がひどく不安定だ。
鮮やかなオレンジ色に染められていた道が夜の色と混ざり合う頃に、私は約二週間ぶりに自宅にたどり着いた。
孤独な私が唯一安心できる場所。
ここまで来れた安堵から、私はやっと肩の力を抜けた気がした。
「ただいま…」
口癖のように呟いた言葉に返事はないけれど、玄関に入って本当に安心した私は玄関でその異変に気づけなかった。
短い廊下を歩き、ワンルームである自室に繋がるドアを開ける。
「…え?」
そこには、何もなかった。
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