第44話
「最近白石さんを見ないけど大丈夫なの?」
非常階段まで歩いて来た私達は少しの距離をおいて向かい合う。
「はい。今は家で体調を整えてもらっています」
「へぇ、そう。…白石さんを見なくなった日に三島が会社を辞めたこと知ってる?」
「辞めた日は分かりませんが、後から同僚に聞いて驚きました」
普段通りの柏木君。
私の言葉に淡々と答える彼は、確実に何かを知っているはずなのにボロを出してはくれない。
好きだったはずの笑顔に苛立ちが募り、私は言ってはいけない言葉を口にしてしまっていた…
「なんか白石さんが家に居るって嘘っぽいわね。本当は、白石さんは三島と一緒に柏木君から逃げてたりして」
彼の仮面を剥がす言葉を。
「…ハッ、何を言ってるんですか?」
その過ちに気付いたのは、数秒の沈黙の後に低い柏木君の声が落とされてからだった。
普段の柏木君からは想像もできないほどの高圧的な声音に、顔を上げて彼の顔を見たことを後悔した。
私を見つめる眼差しは蔑みを含んでいて、不敵に口角を上げて笑っている。
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