第43話
真っさらになった三島のデスクを見続けたこの二週間の間で、白石さんの姿を見ていないことに気がついた。
それとなく白石さんと同じ部署の女の子に聞いてみたら、二週間くらい前から来ていないらしい。
柏木君は白石さんの体調があまり良くないからと周りの人に言っているらしいけど、私は少しの引っかかりを感じていた。
突然辞めた三島と同じ二週間前。
理由を聞いても知らないと言いながら、あの日宇津木部長は三島の鞄を持っていった。
何か隠していることは明白。
パソコンの前でひとり考えていれば、ふと視界に映った宇津木部長と柏木君。
部署も違うし地位もかなり違うのに親しげに話している二人は、絶対に何かを知っている。
…宇津木部長がダメなら、柏木君しかいない。
タイミングよく話を終えて歩いていく柏木君に、私は声をかけた。
「仕事中に申し訳ないけど、ちょっといいかしら」
つい声が冷たくなってしまうのは仕方がないだろう。
私の言葉に笑顔で大丈夫ですよと応えた柏木君は、歩き出した私について来る。
普通、こういう時って何の用事なのか聞かない?
私の声に振り返った時の柏木君の表情は、私が何の話をしたいのかを分かっているようで、入社当時から見惚れる程の優しい笑顔が何故だか今は少しだけ怖かった。
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