高梨side
第42話
三島が会社を辞めた。
なんの前触れもなく忽然と姿を消して二週間。
同期である私になんの相談も無かったことを不思議に思って連絡を入れてみたけど、繋がることはなかった。
宇津木部長に聞いてみても、知らないの一点張りで取り合ってくれない。
そのおかしさに気づいているのは私だけ。
みんな三島が辞めたことを知って最初は驚いていたけれど、数日経つとまるで三島なんて居なかったみたいに仕事をしていた。
おかしい。
なにもかもがおかしい。
あの日、三島は朝から白石さんに話があると言っていて、二人で会議室に向かって行った。
きっと柏木君との結婚と妊娠の噂が事実かどうか確認する為なんだと、私は勝手に思っていた。
仕事の兼ね合いで昨日は遅出出勤だった三島は、柏木君の口から話された事を知らない。
柏木君が好きだった私はかなりのショックを受けた。
だから、三島もその噂が相当ショックだったのだろう。
私がそれは噂ではなくて事実なのだと何度言っても信じてくれなかった。
きっと辛い顔をして戻ってくるだろうから、久々に飲みにでも誘ってやろう。
二人でお互いの傷心を慰めあえたらと思っていたのに、予想に反して三島のデスクに近づいてきたのは宇津木部長だった。
宇津木部長は三島の鞄を手に持つと、私には一瞥もくれずに行ってしまう。
そしてそのまま、三島が戻って来ることはなかった。
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