頭では分かっているはずなのに、私の中にはまだ矛盾した気持ちが燻（くすぶ）っている。

時折みせられる優しさと温もりは、私の感覚を麻痺させていく。

「…もう二度と三島には会わせない」

再び私を抱きしめた柏木君が耳元で呟いた。

痛いほどに強く背中にまわる腕が、私をキツく締め付けていく。

「痛っ、い…」

「白石さんは安心して眠っていて下さい」

上から私を見下ろしていた顔が近づいてきて視線が絡み合い、以前にも聞いたことのある言葉を落とした柏木君の唇が、私の唇と重なった。

「…っ」

また、意識が無くなってしまうのかもしれない。

柏木君のキスは息を奪うように深く、抵抗しようとした私を意識の波に溺れさせていく。

柏木君に意識を奪われるのは、これで何度だろう。

羞恥を煽る水音が徐々に遠のいていく。

目が覚めたら私はどこにいるのだろう。

…と、そこまで考えて私の意識は途絶えた。

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