第38話

薄々感じていた三島さんの狂気。



常に笑顔でいる三島さんは、私がご飯のお誘いを断るたびに、瞳に激しい狂気を露わにしていた。



それが、ずっと怖かった。



柏木君も偽りの笑顔を浮かべていることが多いし、私を嫌うその態度は怖かったけど、それとは違う恐ろしさ。



柏木君の冷たい瞳と三島さんの狂気的な瞳は、全くの別物。



「…渡さないっ」


「ぁ、ぅ…」



ブチッという音がして、首元に留まっていたボタンが床に落ちていく。



晒された首筋や鎖骨には、昨日つけられた歯型やキスマークが散りばめられている。



「クソッ!!渡さない渡さない渡さないっ!!」


「…っ!」



三島さんの荒くなった声が響いてすぐ、首元に激痛が走った。



容赦なく食い込んでくる歯は、更に強さを増していく。



「あぁ…っ!」



痛い。すごく痛い。


そしてなにより、気持ち悪い。



私を抱き寄せたこの腕も、噛まれている首元も、三島さんの口から流れ落ちる唾液が鎖骨を濡らしていくのも、全てを体が拒否している。



助けてっ…



頭に浮かんだのは…

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