第37話
気づいたときにはもう遅かった。
後ろに下がり続けた私の背中はすでに壁にくっついていて、それ以上三島さんから離れることができなくなっていた。
「僕はこんなにも君を…」
伸びてきた手が私の髪を掬い上げる。
辿る視線の先で、三島さんが愛おしそうに私の髪に口付けていた。
その仕草に背筋がゾワリと震えた。
柏木君にもされたことがあるはずなのに、その時とは明らかに違う気持ち悪さと嫌悪感。
「ゃ…」
思わず掴まれていた髪を
静まり返った室内で、三島さんの手から放たれた髪が肩に落ちる。
刹那、肩をもの凄い力で掴まれた。
「…っ!!」
強く壁に押しつけられた背中には痛みが走り、恐怖から助けを呼ぶために出した声はあまりにも頼りないものだった。
大きな声を出せない私の目の前には、三島さんの怒りに震えた顔がある。
「…今、僕を拒んだ?」
低く言葉を落としたその瞳は、激情を孕んでいた。
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