第36話

パタリと音を立てて閉められた会議室の扉。



部屋の奥へと誘導され三島さんを見ると、扉の前で私を見つめていた。



「……」


「あ…の、」



黙ったままの三島さんに向けて出した声はやっぱり掠れていたけど、この静かな空間では聞こえていたはず。



それなのに三島さんはひたすらに私を見つめる。



「…どうして僕じゃダメなんだ」


「…?」



今なにか言った…?


聞き間違いかな…



「白石さんは、頷くか首を振るかだけで答えてくれればいいよ」



優しげに微笑みながら近づいてくる三島さんは、私から一切目を離さない。



見えない威圧感に私の足も後ろへと下がっていく。



「柏木君と結婚するんだって?」


「…ぇ」


「妊娠してるって本当?」



どう答えていいかわからず戸惑う私に、首を振らせる隙もなく矢継ぎ早にされる質問。



「柏木君と付き合っていたのに、僕とご飯に行ったんだね」



段々と三島さんの声が低くなっていく。



「白石さんは僕を誑かしたんだ?」

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