第22話

「お、おかえり…なさい…」


「ただいま」



震える唇がまた柏木君の唇と重なる。



拒もうと肩を押し返すけど、キツく縛られた腕ではどうしようもなかった。



呼吸を奪われ貪られる。


ギュッと目を閉じれば、意識が飛びそうだ。



「おっと危ねぇ…」


「っ…ハァ、ハァ」



寸前のところで離れた唇は濡れていて、柏木君が親指で拭っていく。



「ハハッ、また気絶させるところでした。さすがに夜ご飯は食べてもらわないと」


「…え」


「お昼はご飯を食べる前に気絶させてしまったので」


「…お昼…っ!え、あ、私っ…仕事はっ」



お昼休憩中に私の家に行ってからの記憶がないことに気づいて時計を探すけど、柏木君の家の時計が見当たらない。



窓のカーテンは黒くしっかりと閉じられている。




「大丈夫ですよ。早退の連絡は入れておきましたから」


「そんな…か、かって、に…っ」



瞳がジワリと熱くなる。



「い、いたっ…ぃ…」



さっきよりも強く私を引き寄せる手が肩に食い込んでいくのに、至近距離にある柏木の顔は笑みを深めていく。

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