第19話

だけど白石さんの怯えきっている声を聞いたら、さすがにこのまま高梨さんとの会話を続けさせられない。



また付き合っているという疑いをかけられるかもしれないが、別にいいだろう。



どうせいつか事実になるんだ。



「それに、白石さんには三島がいるもんね?」


「…え」



は?


一歩前に出そうとした足が固まる。



「そんなに驚かないでよ。私と三島は同期だから白石さんの話は聞いてるわ」


「はな、し…?」


「ずっと白石さんのこと可愛い可愛いって言ってたから、ご飯に行けて嬉しかったみたいよ。また行くんでしょう?」


「え、あの…まだ、約束はしていません…」


「あら、三島はまた誘うって言っていたわ。だから、柏木君と仲良くして三島を混乱させるような事はしないでね?」


「ぇ、は…い…」



白石さんの返事を最後に、カツカツとヒールを鳴らしながら給湯室を出てきた高梨さんは、俺のいる方とは反対の方へと歩いていった。



…三島、ね。



俺の知る限りかなりの自信家で、高梨さんと同じ部署だったはず。白石さんをチラチラ見ているのは気付いていたが、まさか接触しているとは思わなかった。



すっげぇイライラする。



前に俺がさりげなくご飯に誘った時は困った顔をしていたのに、あの男とは行ったのかよ。



白石さんに気に入られたくて、人一倍優しく接していた俺より、あの男と?



白石さんは、本当に馬鹿だな。

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