第18話

それは、入社して半年が経とうとしていた頃だった。



「…柏木君ですか?」



給湯室から聞こえてきたのは白石さんの声で、偶然にも出てきた自分の名前に、俺は無意識に身を隠していた。



「そう。なんか白石さんとよく喋ってるわよね。…もしかして白石さん柏木君のこと好きなの?」



確かこの声は、隣の部署の高梨さんだ。

俺からしたら四つ上の先輩。



会話の内容は何となく理解できた。




「それとも、もう付き合ってる?」


「えっ、ち、違います…」



声色からして白石さんは怯えている。



もともと人見知りそうで控えめな白石さんが、高梨さんみたいな気の強そうな先輩に怯えるのは分かるけど、否定されたことに対して少しの苛立ちを感じた。



確かに俺と白石さんは付き合っていないし、白石さんは俺のことを好きではないだろう。



現に他の女はうざいくらい群がってくるのに、白石さんだけは俺に自ら話しかけてくれない。



だけど俺は入社当時から白石さんに惹かれている。



否定的な言葉を言うのは今はしょうがないことで、徐々に落としていけばいい。



「あはは、そうよね?柏木君と白石さんがなんてあり得ないわよね!」


「は、はい…」



勝ち誇ったような笑い声と微かに聞こえた小さな声に、俺は苛立った。

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