思惑

第16話

腕の中で力をなくした白石さんを、近くにあったベッドへゆっくりと寝かせる。



無防備にも気を失ったその弱さに俺がどれだけゾクゾクしたかを、白石さんは知らない。



「フッ、」



ベッドに腰掛けて桃色に染まった頰を指で撫でると、白石さんは小さく吐息を零した。



あぁ、本当に俺を狂わせる天才だな。



一番上まで留まっていたボタンを胸元まで外していけば、一昨日付けたたくさんの痕が綺麗に咲いていた。



本当はここで犯してやりたいけど、残念ながら今は時間がない。



だから、首元に残る歯型を上書きするだけにしよう。



「っん…」



白い鎖骨を舐め上げ、甘噛みしてからゆっくり歯を食い込ませれば、白石さんはまた熱い吐息を零した。



俺を誘っているような吐息。


本当に襲いたくなるから今は勘弁だな。




ブー…ブー…



「ん?」



静かな部屋に響くバイブ音は俺のではなく、白石さんのポケットの中で携帯が振動していた。



なんの躊躇いもなくそれを手に取れば、見たくもない男の名前が表示される。



「しつこい男はモテねぇのに」



着信拒否したそれを自分のポケットにしまい、柔らかな唇に口づけた。

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