第15話

柏木君の入社日に体調不良で休んでいた私は、翌日笑顔で挨拶をしてくれた彼に爽やかな人という印象を抱いた。



デスクが隣ということもあり、口下手で基本無口な私にも気さくに話しかけてくれた。



誰に対しても丁寧に接していて、上司にもすぐに気に入られた柏木君に、憧れから好意を寄せてしまった私。



だけど奥手な私は行動に起こそうとも考えていなくて、女性社員に囲まれている柏木君を密かに想っていた。



時々お話をして優しく笑ってくれるだけで良かった。


私はその小さな幸せを噛み締めていた。



それなのに、柏木君はいつしか私にあの優しい笑顔を見せてくれなくなって、真意の読めない視線を向けられるようになった。



いつからだろう。




『白石さん仕事辞めませんか?』




柏木君を怖いと思ったのは。



仕事の合間に、誰にも気づかれないよう言われた言葉は、私の心をじわじわと蝕んでいった。



それ以来、彼と2人になる空間はできるかぎり避けている。



密かにとはいえ、好意を寄せていた人に嫌悪されていた事実は私の心を乱した。




柏木君が何を考えているのか分からない。



どうしてこうなってしまったのかも分からない。

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