第14話

引かれるがままに柏木君との距離が近くなり、髪を掴んでいた手が私の後頭部にまわっていく。



「白石さんは何も考えなくていい」



見つめ合う視線を逸らせずにいるうちにゆっくりと唇が重なり、リップ音を立てながら何度も何度も触れたり離れたりを繰り返す。



「俺の言うことだけを聞いていればいいんですよ」


「っん、ハァ…ハァ…」



キスのひとつだってまともにできない私は酸欠状態に陥っていて、いつの間にか腰を支えていた柏木君の腕は、強く私を抱きしめる。



朦朧とする意識を立て直そうとするけど、瞬時にまた呼吸を奪われた。



頭がクラクラする。


落としたままの瞼は上げれそうにない。



頰に涙が伝った時にはもう、体を全て柏木君に預けている状態になっていた。



「俺が全て用意するから、白石さんはもう眠っていて下さい」



その言葉を最後に、私の意識はゆっくりと暗闇の中へ落ちていく。









『俺、昨日この部署に配属された柏木 司です。これからよろしくお願いしますね、白石さん』




脳裏に響く声と焼き付いて消えない笑顔。



初めて会った時、私は確かにその優しさに触れていた。

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