第8話
今朝の目覚めはあまり良くなかった。
会社に行くには憂鬱すぎてベッドの中で頭を抱えていたら、いつの間にかギリギリの時間になっていて電車を二本乗り過ごした。
いつもより遅い出社。
会社のロビーを歩く足取りは重く、エレベーターに乗ればあと少しで着いてしまう。
ドキドキからドクドクに変わる心音。
鞄を握る手に力が入る。
「おはようございます、」
なるべく誰にも気づかれないように、いつもの小声よりももっと小さく挨拶をしてデスクに向かった。
なのに、そこにいた沢山の人がこちらを振り返った。
な、に…?
向けられる視線に歩みが止まる。
「おはようございます、白石さん」
「ぁ…」
悔しそうに顔を歪めている人や、優しく微笑んでいる人の中心から現れたのは柏木君だった。
私の勤めるこの会社はフロア全体がオフィスで、部署ごとに隔てられていない。
社員全員分の視線を集めながら私に近づいてくる柏木君は、優しげに微笑んでいる。
でも、瞳はまったく笑っていない。
「白石さんが来るの遅いから、もう話してしまいましたよ」
「…え?」
柏木君の言葉に、一気に血の気が引いた。
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