第7話

「イタッ…」



首元についた歯型の傷にシャワーのお湯が染みる。



色濃く残っているわけではないけれど、所々皮膚が切れ血が滲んでいた。



何度も同じところに噛みつかれてできた首元のソレは、当分治りそうにない。



首元の噛み跡だけでなく、首筋や鎖骨あたりには無数の赤い跡が残されていた。



明日からは襟のボタンを一番上まで留めないと…


そこまで考えて、不安に襲われる。



明日からも嫌でも柏木君に会うし、仕事をしていく上で関わらないわけにもいかない。



どう接していけばいいか、柏木君はどう接してくるのか、まさか誰かに言ったりしないだろうか、そんな不安がジワジワと広がっていく。



こんな時に相談に乗ってくれる友人が、私にはいない。



だからと言って親にも言えないし、同期とはたまに会話するくらいだし、みんな柏木君に好意を寄せているから言えるわけがない。



「もうイヤッ…」



お風呂を出て体を拭いていれば、うち太股にまで赤い跡があって体が震える。



そこに追い打ちをかけるように携帯の通知音が鳴り、手に取れば知らぬ間に登録されていた柏木君の名前が表示されていた。



《明日からも、よろしくお願いしますね。》



「ヒッ…!」



私が勝手に帰ったことを咎めるものでも、恐怖を感じさせるような文章でもないのに、震えた手から携帯が滑り落ちた。



彼が何を考えているのかわからない。


それが怖くて仕方がなかった。

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