第5話

「全部、あなたが招いたことですよ」



微笑んだまま言う柏木君が怖い。



遠回しにお前に泣く資格なんてないと言われているようで、また身体が震えだす。



「白石さんが俺の言うこと聞かないから」


「ぇ…」


「会社、辞めろって言ってるのに」


「っ!」



蔑むような瞳と冷たい言葉に、ズキリと心が痛む。



確かに柏木君は事あるごとに私に会社を辞めろと囁いてきた。誰にも気付かれないように、じわじわと私を追い詰めてきていた。



愛想の良い彼が私を蔑んでいることを知っている人は誰もいない、気付く人だっていない。



それほど彼の外面は完璧。


だから、私は彼が怖い。



「しかも俺を避け始めるなんて、傷つきましたよ」



首元についてるであろう歯型をなぞるように、柏木君の手が触れる。



「俺に抱かれた記憶もないなんて、悲しいですね」


「ゃ…」



言葉と共に下がっていく手が、鎖骨から胸元までをツーっと撫でていく。



彼がこれから何をしようとしているのか…



「もう一度ヤッておきましょうか」



そう言った柏木君は、抵抗する私を激しく抱いた。

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