第2話

私の背中を柔く撫でる手は大きくて、相手が男性だということが分かった。



そして、見知らぬ部屋で見知らぬ人とベッドに服を纏わず眠っていた事実に、恐怖を感じた。



こんなの、どう考えたって…



「いやっ…ごめ、なさい…離して…くださいっ」



相手の肩を押し返すけど、私の力ではビクともせずに首元への痛みが増して頰が涙で濡れる。



「ハハッ。何に謝ってるんですか」


「…っ」


「白石さん」



食い込んでいた歯がゆっくりと離れていく。



聞き覚えのある落ち着いた声と徐々に見えてきた相手の顔は、私を震え上がらせるには十分だった。



「…ぁ」



鼻がぶつかってしまいそうな程の距離にあるその笑顔は、私を見つめながら更に深まっていく。



「おはようございます」


「ぁ、ぇ…なん、で…」


「こんな時でも、白石さんは謝るんですね?」



会社で話す時と同じ口振りで言葉を紡ぐ彼は、涙に濡れる私の頰に唇を落とした。



この状況に動揺しているのは私だけ。



私と彼は同じ会社に勤め、同じ部署で働く先輩後輩の関係にあるというのに、同じベッドに身体を預けている。



「白石さんの身体、柔らかくて気持ちいいですね」


「な、あ…やっ!」



触れ合う素肌が恥ずかしくて身をよじるけど、それに気づいた私を抱き込む腕の力が強くなる。

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