第86話

「あ、ありがとう…、え、」



そっと手を伸ばすと、離れていく。



戸惑いながら優くんの方を見てもなにも言ってくれなくて、笑顔のまま、もう一度私の口元にサンドウィッチを近づけてくる。



前にもこんなことがあった。


このまま食べてという意味だろう。



「…い、ただきます、」



その手が持つサンドウィッチを一口齧れば、予想以上の旨味が口内へ広まった。



「美味しい?」


「うんっ、凄く美味しいっ…」



何度も頷くと優くんもそのサンドウィッチを一口。



「本当だ。美味しいね?」



私を見下ろす瞳は凄く楽しそうで、また唇にツンっとサンドウィッチが当たるので、図らずも頬が熱くなってしまう。



ゆっくりと齧った部分は、優くんが食べた所。




「可愛い。今更、間接キス恥ずかしがるんだ?」


「…っ」




今更…


その言葉が表す内容に頬の熱が増す。

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