第81話

冷たい水が流れコクリと喉を鳴らす。



やっと飲めた薬にひどく安心する。



小さなリップ音を響かせて唇を離した優くんは、ぐったりとする私を抱き上げソファーへ腰を下ろした。




「なにが食べたい?」


「…ぇ?」


「昨日の夜から何も食べてないよね、綾ちゃん」


「…うん、」




でも、いらない。


体が怠くてお腹が空いているのか分からない。



「いらないは、無しだよ」



考えを見透かしたように言われて、反射的に顔を上げればその艶のある視線に捕まった。



私と同じバスローブを身に纏った高校生の彼。




「す、優くん…いくつ…?」




本当に高校生…?


そんな疑問がつい口から出てしまうほど、私の頭の中はぐちゃぐちゃなままだった。



「18」



楽しそうに目を細めた優くんは、高校3年生だと告げる。本当に、未成年。



改めて知り得た情報に血の気が引いていく。




「食欲ないなら、俺が勝手に決めるよ」




腕の中で微かに震える私を一瞥した優くんは、携帯を耳に当てどこかへ電話し始めた。

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