第78話

「まって、」



角度を変えようと一瞬だけ離れた優くんの唇を両手で覆う。



「邪魔」


「あっ…!」



鋭くなった声に怯んで下ろそうとした私の両手を片手で纏められ、頭上に押しつけられる。



「お願いっ、待って…」



懇願するようにその鋭い瞳を見つめれば、深くため息をつき、一瞬にしてその表情が優しいものに変わる。



「…なに?」



落とされた声も、いつもの優くんに戻りホッと胸を撫で下ろす。



「さ、さっき…」



勘違い、かもしれない。


経験がないから分からない。


だから、違うって確信が欲しい。




「あの、ね、さっき…、中に、出し、た…?」




震える唇を必死に抑えて言った。



「ん?」



優くんの口角が僅かに上がる。



両手を掴んでいた手を離し背中にまわった腕。



「きゃ、」



勢いよく起こされた体は、そのまま優くんの腕の中へ倒れる。頭が揺れた衝撃でフラッと意識が揺らぐ。



そして感じた違和感。



「出したよ?」



耳元で囁かれた言葉と共に視界に入った白い液体は、私の中から溢れ出していた。

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