第69話

昨日から優くんとの距離感がおかしい。



「まっ、て、優く…」



一度離れて冷静になりたいのに。



「頷いたのは綾ちゃんだよ」


「…ぇ?」


「俺を受け入れるって、約束したよね?」



頭を抑えていた力だけが不自然に弱まり、誘導されるように顔を上げると、スッと細まった冷たい瞳が私を見下ろしていた。



「ぁ、」



その眼差しに体が震えだす。



「思い出した?」


「…っ」



思い、出す…?



昨日聞いた、優くんの話。



何度も触れた唇の熱。




ーーーー俺を、受け入れて。




意識を失う前に私は…



頷い、た…。



無意識のうちにギュッと力の入った手が、優くんの服を握り締める。

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