第68話

「おはよう、綾ちゃん」


「…はぁ、ぁ」



唇に熱い吐息が当たる距離。



寝起きとは思えない艶やかな笑みを浮かべた優くんは、私を抱きしめながら起き上がった。



腰にまわった腕が離れることはなく、もう片方の手がサラリと髪を梳いていく。




「俺から離れようとした?」


「ん、」


「勝手なことするなよ」


「っす、ぐ…」


「可愛い」




言葉を発する前に塞がれる唇。



少しずつ角度を変えて触れてくるそれに、起きたばかりの頭では追いつかない。



再び掴まれたうなじに、髪がグシャリと乱れる。



「ホント、泣き虫」



息苦しさから流れた涙を優くんの舌が掬いとり、そのまま彼の胸板へ顔を押し付けられた。



朝から激しすぎたかな?と囁かれ、無意識のうちに体を捩っていた。



な、に…?


どうなってるの…?

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