第65話
きっと、カフェオレに混ぜたであろう睡眠薬。
他のお客さんが居た手前、彼女を腕に抱いて連れ去るのを止めることができなかった。
どっちへ連れて行った?
本家の別邸か自宅マンションか。
どちらにせよ、逃げられない。
「はぁ…」
1人になった店内で、何本目か分からない煙草をふかす。
陽太の話し方で何となく察した。
あのUSBの中には、俺の名前もある。
そうなると、俺自身も彼女に犠牲なってもらう他ない。
罪悪感が無いわけじゃないが、人間だれしも自分が一番可愛いんだ。
「ごめんね、綾ちゃん」
きっともう、会うことはない。
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