第51話
「き、のう、だけだよ…。残業終わりに送ってくれたの…」
たまにある優くんの雰囲気が変わる瞬間に慣れなくて、言葉に詰まってしまう。
電話では分からなかったけど、声が低くなっただけで顔は笑ってる。だから、冷たく感じるのはきっと私の勘違いだ。
男の人だから、会話中に低い声に変わることなんてよくあるよね…?
「同期の’永瀬くん’だっけ」
「…え?」
私、名前言った…かな…?
「繁華街で一緒にいたスーツの男だよね」
「う、うん」
「男と出歩いたらダメだよ」
「え、ど、どうして…?」
ゆったりとした口調で話す優くんは艶やかな笑みを浮かべ、手を近づけてくる。
「手、出して」
言われるがまま。
膝上で握り締めていた手を差し出せば、手首をとられた。そこからなぞるように指先へと辿りついた優くんと私の小指が絡み合う。
「約束だよ」
囁くように告げられた言葉。
更に深まった笑みに、何故だか背筋がゾクリとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます