第50話

その後暫く繋がれていた手は、奥山さんがオムライスを持ってきたことで解放された。




優くんが注文したのは、デミグラスソースのかかった半熟オムライス。とても美味しかったけど、余韻から抜け出せず、赤くなった頬のまま食べ進める私をクスクスと笑うものだから、少し食べずらかった。




「ごちそうさまです…」


「まだ顔赤いね?」


「そ、れは、オムライスが出来立てで温かいから…」


「あぁ。そうだったね」




私の言い訳なんて見抜いている優くんは、意地悪く肯定する。そんな姿さえ大人びてるのが年上として悔しい。




優雅にブラックコーヒーを口にする優くんを恨めしく見つめていれば、それに気づいてグラスを置いた優くんは、頬杖ついて見つめ返してきた。




「綾ちゃん、3日間仕事忙しかった?」


「…あ、うん。残業してて、」


「3日とも男に送ってもらったの?」


「え?」


「昨日、俺の電話でたとき男の車に乗ってたよね」




落ち着いた口調なのに感じる圧。



電話口で聞いた低く冷たい声に変化した優くんの表情は、その声色と一致しない。

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