第52話

固まる私を他所にパッと離された手は行き場をなくし、そのままテーブルへ力なく落ちた。




「カフェオレ飲まないの?」


「あ、飲む…よ…」




まだ口をつけていなかったカフェオレ。



水滴のついたグラスを掴み、優くんに促されて飲んだそれはミルクの配合が多く、まろやかな優しい甘みが広がっていく。




「美味しい?」


「うん。すごく美味しい…」


「よかった」




なんだろう。


今日の優くんはいつもと雰囲気が違う。




「綾ちゃん、全然飲まないんだもん」


「…え?」


「よかった」



手に持っていたグラスを優くんが抜き取ったと同時に、視界がクラリと歪んだ。



「…っ」



瞼が重く落ちていく感覚。



「綾ちゃん?」



最後に見たのは笑顔で首を傾げる優くんの姿だった。

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