第48話

「綾ちゃん」




店内に入ってすぐ、いつもの席に座っていた優くんが微笑みながら声をかけてくれた。




「あ、おは、よ…」




カウンター内にいる奥山さんに頭を下げて優くんの方へ向かえば、当たり前だけど私服姿。黒を基調としたシンプルな格好なのに、お洒落で似合っている。




おはよう、と返してくれた優くんの目の前の席へ座れば、奥山さんがカフェオレとブラックコーヒーをテーブルへ置いた。




「あ、あの、注文は…」


「俺がしておいた。あとでオムライスもくるよ」


「え!あ、ありがとう…?」




何も言わずカウンターへ戻ってしまった奥山さんに代わり、答えてくれたのは優くんだった。



去り際に奥山さんの表情が硬く見えたのは気のせい…?



気になってカウンターへ目を向けるけど、見えるのは背中だけだった。




「どこ見てる?」


「…え?」


「やっと会えたんだから、俺を見てよ」


「…っ」



テーブルに置いていた手に、優くんの長くて綺麗な手が重ねられた。

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