第44話

永瀬くんの手がそっと離れていく。



「どうして、謝るの?」



本当に理由が分からない。


どうして戸惑ったような目を向けるの?





「部屋入るまでここにいるから、もう行っていいよ。疲れてるだろ」


「…ぇ」




返ってきたのは予想外の言葉。




私の声が小さくて聞こえなかった…?


それとも、聞こえてないフリをしてるの?



知りたい質問の答えは簡単に流され、視線が落ちる。




これ以上しつこく聞いたら、苛立たせてしまうかもしれない。……けど、知りたい。



……でも、




「あ、りがとう。おやすみなさい…」




考え込むように黙ってしまった永瀬くんに、これ以上何も言えなくなってしまった。

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