第43話

「送ってくれてありがとう。永瀬くん仕事で疲れてるのにごめんね…」




シートベルトを外しお礼を言うと、こちらに体を向けた永瀬くんは私を真面目な表情で見下ろす。




「今のって…」


「うん?」


「…いや、いい」




伸びてきた永瀬くんの手が少しだけ涙の滲んだ目尻を撫でるので、それに反応した頬がすぐに熱をもった。




「赤面症、まだ治ってないのな」


「あ、う、うん…」


「初めて会った時、学生のうちに治すって言ってなかった?」




意地悪く口角を上げた永瀬くんの雰囲気が、なんだか少しいつもと違う。笑っているのに笑っていない。



瞳の奥が揺れているように見えるのは、気のせいだろうか…。




「……なんかあったら、いつでも連絡してこい」


「え?」


「困ってることとかあれば、俺を頼って」


「ど、したの、永瀬くん…」


「…いや。ごめん、何でもない」




明らかに戸惑う私をおいて、独り言のように言葉を落としていく。

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