第36話

風に靡く艶やかな黒髪。



初めて会った日の彼はとても神秘的だった。



あんなにも暗闇に溶けた月の光が似合う人がいるんだと、こんなにも綺麗な男の人がいるのだと驚いた。



実際は年下の、高校生の男の子。



まだ数えるほどしか会っていない筈なのに、私の中での存在感は強く、既に馴染んでしまっているのがとても不思議。





ヴー…ヴー…



デスクの隅で振動する携帯。



わ、びっくりした!


前にカフェで着信音が鳴り響いたことを思い出し、マナーモードになっていたことに安堵する。



裏向きに置いていたそれを手に取り画面を見れば、登録をしていない番号が表示されていた。



だれ…?



暫くして切れた着信。



どっちみち仕事中なので出られないけど、知らない番号からの電話はあまり経験がないから少し怖い。




「……」




数秒画面を見つめ続けたけど2回目の着信はなく、間違い電話だったという結論に至り、仕事を再開した。

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