第31話

そろそろ夏も終わる時期。秋に移り変わろうとする季節は日没が早くなり、窓から覗く外の世界はもう完全に真っ暗だ。



ちょっと前まではもう少し明るかったのに…と思いながら空を見つめていれば、窓に付いていた巻き込み式のブラインドが、音を立てて落ちてきた。




「綾ちゃん」



びっくりして優くんの方を見れば、その手にはブラインドの紐が握られている。



「明日も来るよね?」


「えっ!…あ、わかんな…い…」



私の驚きなんて見えていないのか、なんでもないように聞かれ一瞬反応が遅れてしまった。



何故急にブラインドを下げたのか聞きたいけど、先へ進む会話に話を戻すことができない。




優くんの黒い瞳が真っ直ぐに見つめてくる。




「なに、繁華街でもいくの?」


「繁華街は、行かないかな…。明日は残業が…」




今日ここへ来るために残してきた仕事と、会議資料、明日渡されるであろう伝票を処理しないといけなくて、思い出すと少し憂鬱になる。

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